機能性バイオマテリアルで難治性疾患を治療する

ご挨拶

2021年11月に栗澤研究室を発足しました。前職のシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)傘下の研究所では、自らのグループを率いて、難治性疾患を治療可能とする事を目的とした機能性バイオマテリアルの研究開発に18年間従事してきました。

昨今、遺伝子治療や再生医療などを含む先端医療が実施され、これまでに治療不可能とされてきた疾患に新しい治療法が切り拓かれてきています。このような先端医療を支えるバイオマテリアルに関する研究は、難治性疾患を将来的に治療可能とする医療技術開発において益々重要な役割を果たすものと期待されています。最先端の科学技術を駆使した医薬品が数多く開発されてきておりますが、薬物療法による副作用・副反応の発現や不十分な治療効果などの問題が、まだまだ残っています。このような状況を著しく改善する機能性バイオマテリアルを設計し、社会実装を本学(JAIST)でと考えて栗澤研究室を立ち上げています。現状での疾患治療にどのような問題があり、どのようなバイオマテリアルを設計すれば、どのくらい治療成果や患者の生活の質(QOL)が向上するのかといった事を学生さんや研究スタッフとディスカッションするところから、研究室をスタートできればと考えております。

私が本学で研究活動するのは23年ぶりとなります。1993年に当時の材料科学研究科に一期生として入学し、博士学位取得までの5年間、バイオマテリアル研究を専門とする研究室で学びました。JAIST大学院生の際に恩師の指導の下で、海外で独立グループの研究室立ち上げに携わったのですが、帰国し、本学で教員として研究室立ち上げを再び行うことになるとは、卒業する当時には全く思ってもみませんでした。今後、学生に寄り添うスタイルで研究室を運営することをモットーとし、活力のある研究者の卵を育てたいと切に願っております。バイオマテリアル研究においてもグローバル競争が激化しているなかでは、タイムリーな研究成果発信が大事ではありますが、愚直に教育・研究に向き合うことが大切な姿勢と考え、どのように大学院生とコミュニケーションを図ればよいのか、どのような戦略研究計画が妥当なのかを日々、考えております。