研究内容
緑茶カテキン・ナノ粒子を用いたドラックデリバリーシステム
栗澤研究室では、タンパク質・抗体・低分子・核酸などの性質の異なる医薬品の内包を可能とする緑茶カテキン誘導体を薬物キャリアとしたナノ粒子の開発によって、癌をはじめとする難治性疾患の治療を目指したドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究を展開します。 緑茶カテキン・ナノ粒子は、薬物を疾患部に送達することを主な目的とした従来のDDS製剤とは異なる設計指針によって開発されています。疾患部への送達に加えて、薬物キャリアの主成分である緑茶カテキンが抗癌活性を有するために、薬物と緑茶カテキンのそれぞれの抗癌活性に基づくシナジー効果によって、抗腫瘍効果を増幅することを特徴としています。
このテクノロジーは我々がパイオニアとして世界に先掛けて開発し、多くの研究者が関心を寄せています。昨今、分子標的治療、遺伝子治療、免疫治療などを含む様々な新しい治療法が切り拓かれてきていますが、その一方、多くの治療において、不十分な薬効、重篤な副作用、高侵襲を伴う投薬方法など、様々な課題を抱えているのも現状であります。このような問題は安全で効果的な治療を妨げるだけではなく、患者の生活の質(QOL)を低下させたり、高額な社会保障費の負担を強いることから、迅速な改善が求められています。
緑茶カテキンは抗癌活性以外にも抗酸化・抗炎症・抗肥満作用など様々な有効な生理活性を有することが知られています。我々はその生理活性に起因するある緑茶カテキンの生体分子に対する分子間相互作用を利用し、多様な薬物を封入できる薬効増幅型ナノ粒子を開発しています。この薬効増幅型ナノ粒子により、高い治療効果、投与量の減量、副作用の低減、医療費の削減を可能にすることが期待できます。さらに、緑茶カテキン・ナノ粒子の特長である高い薬物内包率、安定性および疾患部への特異的移行性は、これまでに不可能とされてきた低侵襲的投与を可能とし、今日の標準治療における様々な問題や限界を解決できるものと期待しています。
本研究は2014年Nature Nanotechnologyでの掲載をはじめ、様々な研究論文で発表されており、Nature、Nature Materials、Nature Reviews CancerにてResearch Highlightとして選定されています。さらに、様々なメディアでイノベーティブテクノロジーとして注目され、Grand Prize, The Crown Prince Creative, Innovative Product and Technical Advancement Award (CIPTA) 2015を受賞しています。
Green Tea Could Help Scientists Develop New Cancer Fighting Drugs, MailOnline (5 October 2014)